今回のテーマは『効果がある遺言事項』です。
遺言書は書いたこと全てに法律的な効果があるわけではありません。
有効な遺言事項は法律によってきっちりと決められています。
今回はそれら全17個を列挙して、簡単に解説を加えたいと思います。
1.身分に関すること
身分に関することは次の3項目について書くことができます。
1.推定相続人の廃除及びその取消し
手続きは遺言執行者だけが行うことができます。
2.認知
認知の手続きは遺言執行者だけが行うことができます。
認知とは婚姻関係にない男女間の子を父親が「この子は私の子です」と認めることです。
3.未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
未成年の子の最後の親権者は遺言によって、その子の後見人ならびに後見監督人を指定することができます。
2.財産に関すること
財産に関することは次の10項目について書くことができます。
4.相続分の指定及び指定の委託
相続財産の分割の割合を相続人ごとに指定することができます。
また、第三者に分割の割合を決めてもらう委託をすることもできます。
5.特別受益持ち戻しの免除
特別受益があった場合、本来なら受益分を一度相続財産に戻さなければなりませんがそれを免除させることができます。
6.遺産分割の禁止
遺言者は相続開始の時から5年を超えない範囲で遺産分割を禁止することができます。
7.遺産分割方法の指定及び指定の委託
遺産の分割方法を指定することができます。
また、第三者に分割方法を決めてもらう委託をすることもできます。
8.相続人相互の担保責任の指定
誤って他人の土地を相続したり、相続した債権を満額回収できなかったりして、特定の相続人が損害を被った場合、他の相続人はその損害をカバーしなければなりません。
遺言者はそれらの損害のカバーの仕方を指定することができます。
9.遺留分減殺方法の指定
遺留分を侵害する割合で遺産を分割したとき、侵害された人は侵害した人に対して、遺留分減殺請求をすることができます。
本来は、侵害した人たちがその割合に応じて侵害された人に弁済をしますが、それ以外の方法を遺言によって指定することができます。
10.遺贈
相続財産を相続人以外の第三者に譲渡することができます。
11.信託法上の信託の設定
特定の者に対して遺産を譲渡したり、処分権限を与えることで、一定の目的に従い、その目的を達成させるために必要な遺産の管理や処分をさせることができます。
12.財団法人設立のための寄付行為
遺言者は遺言で一般財団法人を設立させる意思表示をすることができます。
遺産を財団を通して、世の中の役に立つように使ってほしいという場合に一般財団法人を設立して、その際に拠出する金額を明示します。
13.生命保険金受取人の変更
遺言者は生命保険金の受取人を遺言によって変更することができます。
3.遺言の執行に関すること
遺言の執行に関することは次の2項目について書くことができます。
14.遺言執行者の指定及び指定の委託
遺言執行者を指定することができます。
また、第三者に遺言執行者を決めてもらう委託をすることもできます。
15.遺言執行者の職務内容の指定
遺言執行者が請け負う職務の内容を指定することができます。
4.その他
上記以外のことで次の2点についても遺言書に書くことができます。
16.祭祀主宰者の指定
仏壇や墓地に関することを受け継ぐ者を指定することができます。
後継者の指定は第一に遺言者の指定、第二に地方の習慣、第三に家庭裁判所の選任の順で決まります。
17.遺言の取消
すでに書いた遺言を別の遺言によって取消することができます。
以上の17個の項目が遺言としての法律的な効果がある事項です。
一方でこれ以外のことで「書いてもいいけど効力がないもの」も存在します。
次回(第39話)はそれをテーマにしたいと思います。