民法第973条「成年被後見人の遺言」

 

民法第973条「成年被後見人の遺言」

成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

2項

遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

 

意訳

成年後見を受けている人が自分の言動を理解できる能力を回復し遺言書を作成する場合には、2人以上の医師の立会いがなければならない。

2項

遺言書を作成する際に立ち会った医師は、遺言者が遺言書を書く際に「自分の言動を理解できる能力を欠いていなかった」ことを遺言書に記して、これに署名し、印を押さなければならない。

ただし、秘密証書遺言を作成する際にはその封紙に「自分の言動を理解できる能力を欠いていなかった」こと記載をし、署名し、印を押さなければならない。

 

条文解説

まず、事理を弁識する能力(自分の言っていること、やっていることを理解する能力)が欠けている人は遺言書を作成することができません。

成年後見を受けている人は事理を弁識する能力を欠く状況にあると判断されるため、原則として有効な遺言書を作成することはできません。

しかし、成年後見を受けている人でも一時的に事理を弁識する能力が回復する場合があります。

この条文ではその場合に限り、医師2人以上の立会いのもと、有効な遺言書が作成できることを認めています。

 

2項

遺言書を作成の際に立ち会った医師に対して設けられた手続きに関する規定です。

この973条でいう遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のいずれの方式での作成でも可能とされています。

「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の場合には、医師は遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければなりません。

「秘密証書遺言」の場合、医師は遺言書の中身をみることは出来ませんので、代わりに封紙に事理弁識能力を欠く状態になかった旨を記載し、これに署名し、印を押すことになります。

 

関連条文

民法第968条 自筆証書遺言

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

第2項

前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

第3項

自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

民法第969条 公正証書遺言

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

 

民法第970条 秘密証書遺言

秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

 

第2項

第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

 

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