民法第991条 受遺者による担保の請求
受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件付きの遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様とする。
意訳
遺言書に書かれた遺贈を実行することができるようになるまでの間、遺贈を受ける人は遺贈を履行する義務を負う人に対して相当の担保を請求することができる。
停止条件付きの遺贈の場合に、その条件が実現するか分からない間でも同様に担保を請求することができる。
条文解説
まず前提として、遺贈を行う場合は必ず遺言書にその旨を書かなければなりません。
そして、遺言書は原則として「遺言者の死亡の時からその効力が生じる」ことになります。(民法第985条1項)
しかし、さまざまな事情で自分の死後すぐに遺言書の効力を発生させたくない場合も考えられます。その場合には『遺言書の効力を発生させる条件』を付けた遺言書を書くことができます。
たとえば「孫に100万円遺してあげたいけど、小学生には早いから20歳になったら効力を発生させて受け取ることができるようにしよう」というケースです。
このように遺贈の効力を発生させる条件を付けることは可能ですが、この場合に遺言書を書いた人(遺言者)の死亡から遺贈の効力発生までに空白の時間ができてしまいます。(上記の例:もし孫が15歳の時に遺言者が死亡した場合、遺贈の効力が発生するまで5年間の空白ができてしまいます)
もし遺贈を履行する義務を負う人が、この空白の時間に遺贈を履行する資力を失ってしまった場合、遺贈を受けるはずだった人が遺贈を受けられなくなってしまうリスクがあります。
そこでこのようなリスクを回避し、遺贈を受ける人の権利を守るためにこの条文が規定されています。
すなわち、遺贈を受ける予定の人は遺贈を履行する人に対して相当の担保を請求できることとし、自身の権利を守ることができるようにしました。
なお、この条文でいう担保の種類や請求の方法については特に決まりはありません。
関連条文
民法第985条 遺言の効力の発生時期
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
第2項
遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。