民法第1031条「配偶者居住権の登記等」

民法第1031条 配偶者居住権の登記等

居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。

2項

第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。

 

意訳

配偶者居住権が設定された建物の所有者は、その配偶者に対して『配偶者居住権設定登記』をさせる義務を負う。

2項

配偶者居住権については民法第605条(不動産賃貸借の対抗力)を、配偶者居住権設定登記が行われた場合には民法第605条の4(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)に規定されているルールを準用する。

 

条文解説

配偶者居住権が設定された建物の登記に関する規定です。

この条文は遺産分割や被相続人からの遺贈によって、配偶者以外の人が建物の所有者になっていることが前提となっています。

その建物に配偶者居住権が設定された場合には、建物の所有者は建物の登記簿に『配偶者居住権設定』の登記を行う義務を負うことになります。

なお、登記の申請を行う際は、配偶者と所有者の両者が共同で行わなければなりません。

登記に関するご相談はこちら

 

実際の登記簿には配偶者居住権設定の欄に「配偶者居住権の存続期間」や「第三者に居住建物の使用又は収益をさせることを許す旨の定め」が記載されます。(下記関連条文参照、不動産登記法 第81条の2)

 

2項

配偶者居住権の設定登記が行われた場合には、不動産賃貸借の場合に規定されているルールの一部を当てはめて適用することが定められています。

 

まず一つ目は「対抗力」です。(第605条の準用)

「対抗」とは、自分の権利を主張することをいいます。

配偶者居住権が登記されれば、配偶者はその権利を「その不動産について物権を取得した者その他の第三者」に対して主張することができるようになりますので、たとえば建物の所有者が変わったとしても、新しい所有者に対して『配偶者居住権がありますよ』と主張できるわけです。

 

二つ目は「妨害停止の請求と返還請求」です。(第605条の4の準用)

配偶者居住権が登記されているにも関わらず、その建物において第三者が占有を妨害している場合には配偶者は妨害停止の請求を行うことができ、また、第三者に占有されている場合には建物の返還の請求を行うことができます。

 

関連条文

不動産登記法第81条の2 配偶者居住権の登記の登記事項

配偶者居住権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 存続期間
二 第三者に居住建物(民法第千二十八条第一項に規定する居住建物をいう。)の使用又は収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定め

 

民法第605条 不動産賃貸借の対抗力

不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

 

民法第605条の4 不動産の賃借人による妨害の停止の請求等

不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。

一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

 

 

【相続オールサポート大阪】トップページ

 

関連記事

  1. 民法第884条「相続回復請求権」

  2. 民法第953条「不在者の財産の管理人に関する規定の準用」

  3. 民法第1009条「遺言執行者の欠格事由」

  4. 民法第898条「共同相続の効力」

  5. 民法第969条の2「公正証書遺言の方式の特則」

  6. 民法第1005条「過料」

公式LINEアカウントで相談受付中

友だち追加

相続関連記事

PAGE TOP