民法第1044条「遺留分を算定するための財産の価額」

民法第1044条 遺留分を算定するための財産の価額

贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

2項

第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。

3項

相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

 

意訳

相続開始前の1年間にされた贈与に限り、第1043条で規定されている「贈与した財産の価額」に含める。

被相続人と贈与を受けた人の双方が、その贈与によって遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与を行った場合は、それが相続開始前の1年以上前に行われたものであっても「贈与した財産の価額」に含める。

2項

贈与を受けた人の行為によって、贈与されたものが滅失したり価値が増減した場合、贈与されたものは民法第904条の準用により、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなして評価額を定める。

3項

相続人に対する贈与については相続開始前の10年間にされた贈与(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額)に限り、第1043条で規定されている「贈与した財産の価額」に含める。

被相続人と贈与を受けた人の双方が、その贈与によって遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与を行った場合は、それが相続開始前の10年以上前に行われたものであっても「贈与した財産の価額」に含める。

 

条文解説

1つ前の第1043条第1項で遺留分を計算する元となる遺産の計算方法が規定されていますが、その条文に出てくる「贈与した財産の価額」について加えるべき贈与の範囲が本条で詳しく規定されています。

まず第1項では、相続人以外の人に行われた贈与について規定されています。

それによると、相続開始前の1年間に行われた贈与に限り、「贈与した財産の価額」に加えることとされています。

これは実際にモノや権利が贈与され所有権が移転したタイミングではなく、贈与の原因となる行為(たとえば贈与契約の締結など)が相続開始前の1年の間に行われたかどうかで判断されます。

 

また、被相続人と贈与を受けた人の双方が、その贈与によって遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与を行った場合は、それが相続開始前の1年以上前に行われたものであっても「贈与した財産の価額」に加えなければなりません。

判例によると、「損害を加えることを知って」というのは、この贈与が行われると遺留分権利者に損害が発生してしまうことが分かっているだけで足りるとされています。

したがって、贈与するモノや権利が財産のなかで大きな割合を占めている場合は、贈与する方もそれを受ける方も十分に注意が必要です。

 

2項

贈与を受けた人の行為によって、贈与されたものが滅失したり価値が増減した場合の評価方法について規定されています。

この場合には民法第904条の準用で、贈与されたものの評価額は『相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなして定める』とされ、「贈与した財産の価額」に加えなければなりません。

 

3項

第3項は相続人に対する贈与に関する規定です。

相続人に対する贈与については相続開始前の10年間にされた贈与のうち、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与に限り「贈与した財産の価額」に加えなければなりません。

婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与とは、いわゆる『特別受益』と言われ、生前贈与として“遺産の先渡し”と解釈することもできる範囲のものです。

 

この条文は2019年に施行されたものになりますが、それ以前は『特別受益』に関しては遡る期間は定めず、過去に行われた全ての特別受益を「贈与した財産の価額」に加えなければなりませんでした。これが法改正によって相続開始前の10年間までという区切りが設けられたことになります。

 

関連条文

民法第904条 特別受益者の相続分

前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

 

民法第1043条 遺留分を算定するための財産の価額

遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。

 

 

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