民法第989条 遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し
遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
2項
第九百十九条第二項及び第三項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。
意訳
一度、遺贈を受けること、もしくは遺贈を受けないことを決めた場合、その後にその決定を撤回することはできない。
2項
民法第919条第2項および第3項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)に規定されているルールは、遺贈の承認及び放棄においても適用される。
条文解説
遺贈の承認および放棄に関する意思決定の撤回に関する条文です。
遺贈を受けるにしても受けないにしても、一度行った意思決定を撤回することは他の利害関係人に影響を及ぼすこととなりトラブルの元になりかねませんので、これを予防するために原則として一度下した決定を撤回することは認められません。
なお、この条文は遺贈されるものが指定されている「特定遺贈」の場合にのみ適用され、割合が指定される「包括遺贈」には適用されないと解されています。
2項
原則として意思決定を撤回はできない一方、“取消し”ができる場合があります。
これは民法第919条第2項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)に規定されているルールが準用され、具体的なケースとしては、未成年者が単独で遺贈の承認あるいは放棄を決定した場合や、詐欺・強迫によって意思決定をさせられた場合には、その取り消しが認められます。
ただし、取消しをする場合は追認をすることができる時から6ヶ月以内、遺贈の承認又は放棄の時から10年以内に行わなければなりません。(民法第919条3項準用)
「追認することができる時」とは、たとえば、強迫によって遺贈の放棄をさせられた場合、強迫されていた状況から脱し、正しい判断をできるようになったときを「追認ができる時」とし、ここから6ヶ月以内に誤った意思表示を取り消す手続きを行わなければなりません。
関連条文
民法第919条 相続の承認及び放棄の撤回及び取消し
相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
第2項
前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
第3項
前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
第4項
第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
民法第915条 相続の承認又は放棄をすべき期間
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
第2項
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。