民法第1002条 負担付遺贈
負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2項
受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
意訳
負担付遺贈を受けた人は、遺贈されたものの価額の範囲内でのみ義務を履行する責任を負う。
2項
元々、負担付遺贈を受けるはずだった人がその遺贈を放棄した場合、負担によって利益を受けるはずだった人がその遺贈を受けることができる。
ただし、遺言の中でこれと異なることが書かれていた場合はそれに従う。
条文解説
負担付遺贈とは遺産を受遺者(遺贈を受ける人)に譲り渡す代わりに一定の義務を負わせる遺贈のことをいいます。
たとえば遺言者が孫に対して『銀行預金を遺贈する代わりに妻(祖母)の介護をするように』といった内容の遺言書が残されたケースです。
もし受遺者に対する義務の範囲を無限に認めてしまった場合、「受け取る財産」と「負う義務」のバランスが保てず、受遺者にとって負担が大きくなり過ぎる可能性が生じてしまいます。
そこで、この条文で負担付遺贈を受けた人の義務の範囲を「遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ」とし、受け取る財産の価額を超える義務を負う必要がないとしました。
2項
負担付遺贈では、受遺者が一定の義務を負うことによって“利益を受ける人”が存在します。
前項の規定によって、たとえ義務の範囲が限定されたと言っても「負担があるなら遺贈は受けたくない」と考える受遺者もいるでしょう。
そのような時、受遺者は「遺贈を放棄」することができます。(民法第986条)
本条では受遺者が遺贈を放棄した場合には、利益を受ける人がその遺贈を受けることができることが規定されています。
先ほどの例では孫が受遺者、妻(祖母)が利益を受ける人となり、もし孫が遺贈を放棄した場合には妻(祖母)が銀行預金を受け取ることができるようになります。
関連条文
民法第986条 遺贈の放棄
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
第2項
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。