今回のテーマは「遺言の撤回」です。
遺言書はいつでも自由に撤回して作り直すことができます。
今回は遺言書の撤回の方法と注意点を紹介したいと思います。
遺言の撤回の方法
遺言の撤回は次の5つの方法があります。
①前の遺言を撤回する旨の遺言をする
②前の遺言に抵触する内容の遺言をする
③前の遺言に抵触する生前処分をする
④遺言書を破棄する
⑤遺贈の目的物を破棄する
それぞれについて、もう少し掘り下げて解説したいと思います。
1.前の遺言を撤回する旨の遺言をする
新しい遺言書のなかに、前に書いた内容を撤回する旨を書くことで、古い遺言書の内容を撤回することができます。
2.前の遺言に抵触する内容の遺言をする
前の遺言と矛盾することを書きます。
矛盾する内容は、新しい方の遺言書に記載されていることが優先されますので、古い内容を撤回することと同じ効果があります。
【例】
前の遺言「家を長男に相続させる」
新しい遺言「家を次男に相続させる」
この場合、同じ家を相続させる相手が矛盾しています。
このときは、新しい遺言書が優先され、古い遺言書は撤回されたことになります。
したがって、この場合は次男が不動産を相続することになりそうです。
3.前の遺言に抵触する生前処分をする
遺言者が生前に遺言の内容と矛盾する行為をしたときは、遺言書の内容は撤回したとみなされます。
【例】
遺言書には「株式を全部長男に相続させる」と書いていたのに、遺言者が生前にその株式をすべて売却した場合、遺言に書いた内容は撤回されたこととなり、長男は相続できません。
4.遺言書を破棄する
遺言者が故意に遺言書を破るなど破棄した場合は、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされます。
5.遺贈の目的物を破棄する
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときは、その遺贈を撤回したものとみなされます。
遺言の撤回の注意点
1.遺言の方式に従わないと無効
遺言の撤回は、遺言のルールにしたがって書かなければ無効となります。
特に自筆証書遺言を遺す場合には注意してください。
2.遺言の種類は異なってもOK
撤回の遺言の種類は決まっていません。
自筆証書遺言でもかまいませんし、公正証書遺言でもかまいません。
公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能です。
3.遺言者は撤回の権利を放棄できない
遺言の撤回は権利の一つですが、この権利は事前に放棄することができません。
もし事前に撤回の放棄を認めてしまうと、放棄した後に気が変わって、前に書いた遺言書を撤回したいと思っても、それができずに遺言者の意思を尊重できないためです。
遺言の撤回は遺言者の意思を最後まで尊重するよう、さまざまなカタチで行うことが認められています。
かといって、相続人が詐欺や強迫によって、無理やり遺言を撤回させることは、その撤回自体が無効となりますので、けっしてなされないように…