今回のテーマは「相続の限定承認」です。
限定承認とは亡くなった方の財産に借金が含まれている場合に使われる相続の方法です。
正直、私もこの『限定承認』のにはまだ出会ったことはありません。
知り合いの弁護士に聞いても、ほとんど扱った例はないようです。
ただ知っていて損をすることはないですので、最後までお読みいただければと思います。
相続の限定承認とは
相続財産には現金や不動産といった「プラスの財産」と借金といった「マイナスの財産」があります。
通常「プラスの財産が多い時」は全部相続し、「マイナスの財産が多い時」は全部放棄する場合がほとんどです。
では、プラスの財産とマイナスの財産の「どちらが多いか分からないとき」や「マイナスの財産があるのは分かっているが、どうしても手放したくないプラスの財産があるとき」はどのようにすればいいのでしょうか。
このようなケースで活躍するのが『限定承認』です。
『限定承認』とはプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続するという意味です。
全部相続? 全部放棄? 限定承認?
限定承認をするとどうなるのでしょうか。
分かりやすいように数字を使いながら比較していきましょう。
1.全部相続する場合
相続人はプラスの財産もマイナスの財産もすべて相続することになります。
プラスの財産(2,000万円)とマイナスの財産(3,000万円)のすべての財産を相続することになり、全てのマイナスの財産の返済義務も相続人が引き継ぎます。
2.全部放棄の場合
相続人はプラスの財産もマイナスの財産も相続しません。
3.限定承認の場合
プラスの財産が2,000万円ですので、マイナスの財産も2,000万円だけ相続します。
このように、限定承認ではプラスの財産を相続したうえで、その範囲内のマイナスの財産を相続する方法になります。
マイナスの財産がある一方、どうしても手元に残しておきたいプラスの財産(先祖代々からの実家や経営する会社の株式など)が遺産に含まれる場合には「限定承認」も選択肢の一つになってくるでしょう。
限定承認の方法
限定承認は「相続が発生したことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申し出なければなりません。
これは「相続放棄」のルールと同じですね。
もし相続の発生を知った時から3ヶ月が経過してしまうと、「全部相続した」とみなされてしまうため、注意が必要です。
また、限定承認は一緒に相続をする相続人全員で裁判所に申し出をしなければなりません。
つまり、一人だけの意思では申し出ができないということです。
もし相続人の一人が全部相続することを認めたり、限定承認に反対する人がいると、この方法は使えなくなってしまいます。