民法第885条 相続財産に関する費用
1項
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。
ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
2項
前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。
意訳
1項
相続財産に関する費用は、その財産から支払うこととする。
ただし、相続人のミスによって発生した費用はその相続人の負担してもよい。
2項
相続財産に関する費用は、遺留分を侵害された相続人が、遺留分の穴埋めをしてもらうために受け取った財産のなかから支払う必要はない。
条文解説
1項
相続財産に関する費用とは主に
1.固定資産税
2.火災保険料
3.修繕費
4.遺産の保全のための費用
5.鑑定費用
などが含まれます。
問題は、この費用を誰が負担するかです。
ポイントは、これらの費用を「相続人の財産」から支払わなければならないのか、それとも「遺産」から支払うべきなのかです。
遺産を普通に相続した場合、取得した遺産から費用を捻出しようが、相続人が元々もっていた財産から捻出しようが、それは遺産を相続した人の自由ですので、特に大きな問題になることはありません。
一方、相続放棄や限定承認の場合など誰も相続しない遺産がある場合には誰が費用を負担するのかが問題になります。
この条文では、そのような場合は「遺産から費用を支払いましょう」と規定しています。
2項
また、第885条2項は、亡くなった人が生前に贈与をやり過ぎたために、遺留分を侵害された相続人が出てきてしまった場合のルールです。
この場合は、遺留分を侵害された相続人を守るため、穴埋めのために取得した財産のなかから遺産に関する費用を捻出する必要はないとされています。