民法第894条 推定相続人の廃除の取消し
被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2項
前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
意訳
被相続人は一度認めてもらった特定の相続人の相続廃除を取り消す請求を家庭裁判所に対してすることができる。
2項
相続廃除の取消しは遺言書に書くことでもすることができる。
遺言執行者は、被相続人の死亡後、遺言書の効力が発生した時には遅滞なく廃除取消しの請求を家庭裁判所に行わなければならない。
この場合、一度廃除された推定相続人は、はじめから廃除されていなかったとして扱われる。
条文解説
推定相続人が被相続人に対して虐待をしたり重大な侮辱を加えたとき、または著しい非行があったとき場合、被相続人はその推定相続人の相続人たる地位を剥奪することができます。(民法第892条、893条)
これを『推定相続人の廃除』といいます。
推定相続人の廃除は家庭裁判所に請求するか遺言書にその旨を書くことによって行うことができますが、本条は推定相続人の廃除を一度、家庭裁判所に認めてもらった後や遺言書のなかで意思表示した後に、その廃除を取り消す場合に適用されるルールです。
相続廃除は被相続人の意思によって行うことができることが前提となっていますので、一度無くした推定相続人との信頼関係が修復できて許してあげようと思うこともあるでしょう。
このような場合、被相続人の存命中は自ら家庭裁判所に取消しを請求することができます。
また、家庭裁判所に請求しなくても遺言書に書くことによって廃除の取消しの意思表示をすることも可能です。
後者の場合は遺言執行者は遅滞なく、家庭裁判所に取消しの請求を行う義務を負います。
関連条文
民法第892条 推定相続人の廃除
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
民法第893条 遺言による推定相続人の廃除
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。