民法第904条「特別受益者の相続分」

民法第904条 特別受益者の相続分

前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

 

意訳

贈与された物が、贈与を受けた人の行為によって無くなったり価格が増減したとしても、相続開始の時にはその物が贈与された当時のまま存在するとみなしてその価格を決める。

 

条文解説

遺贈や贈与された財産が無くなったり価値が変わった場合に、その財産の評価額を決める方法について書かれた条文です。

 

この条文のおかげで「贈与は受けたけど、そのものは無くなってしまった。ないものは評価のしようがない!」という主張は通らず、原則として相続が始まった時に当時のままの状態で存在すると仮定して相続開始時の価値で贈与があったと考えます。

なお、この条文には「受贈者の行為によって」という条件がついていますので、たとえば災害などの不可抗力によってものが無くなってしまった場合はこのルールは使えず、贈与はなかったものとして相続分を計算することができると考えられています。

 

では、平屋で贈与を受けた建物に2階部分を増築し、価格が増加した場合はどうなるのでしょうか。

この場合「相続開始時にこの建物が平屋だったら・・・」という仮定で評価額を算出することになります。

 

関連条文

民法第903条 特別受益者の相続分

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

第2項

遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

第3項

被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

第4項

婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

民法第900条 法定相続分

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

 

民法第901条 代襲相続人の相続分

第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。

第2項

前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

 

民法第887条 子及びその代襲者等の相続権

被相続人の子は、相続人となる。

第2項

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

第3項

前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

 

民法第889条 直系尊属及び兄弟姉妹の相続権

次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
第2項

第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

 

民法第891条 相続人の欠格事由

次に掲げる者は、相続人となることができない。

1号

故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

2号

被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

3号

詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4号

詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5号

相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

民法第902条 遺言による相続分の指定

被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

第2項

被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

 

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