民法第926条 限定承認者による管理
限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。
2項
第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
意訳
限定承認を選択した場合は、相続人は自分の財産と同じだけの注意をもって、遺産の管理をし続けなければならない。
2項
限定承認者が、受任者による報告(第645条)、受任者による受取物の引渡し等(第646条)、受任者による費用等の償還請求等(第650条)に規定されているようなことをするときも、前項と同じように注意を払って行わなければならない。
条文解説
限定承認を選択するということは、借金などのマイナスの財産が存在し、そこには必ず債権者がいます。
限定承認を選択した時点で遺産の一部は債権者への返済に充てることになりますので、相続人に対して遺産を管理する義務を負わせるというルールを設けています。
2項
遺産の管理について、債権者は相続人に遺産の管理を任せている(委任している)というように解釈し、委任に関するルールを限定承認の場合にも適用することとしています。
下記の関連条文の「委任者 → 債権者」「受任者 → 相続人」と置き換えて読んでいただくと理解しやすくなるかと思います。
関連条文
民法第645条 受任者による報告
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
民法第646条 受任者による受取物の引渡し等
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2項
受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
民法第650条 受任者による費用等の償還請求等
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2項
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。