民法第943条 財産分離の請求後の相続財産の管理
財産分離の請求があったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
2項
第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
意訳
相続債権者または受遺者から財産分離の請求があったときは、裁判所は管理人を選任するなど、相続財産の管理に必要な処分を命ずることができる。
2項
家庭裁判所が遺産の管理人を選任したときは、その管理人は27条~29条に規定されている不在者の財産管理人と同じ権利や義務を負う。
条文解説
相続債権者や受遺者から財産分離の請求があったときは、相続人の財産を『被相続人から相続で取得した財産』と『相続人が元々もっていた財産』とに区別して管理しなければなりません。
相続人がこの2種類の財産をしっかり区別して管理することができなければ、相続債権者や受遺者に対して不利益が生じるおそれがあるため、相続財産の管理に必要な処分を命ずることができる裁量が家庭裁判所に与えられています。
2項
家庭裁判所が相続財産管理人を選任したときは、管理人は民法第27条~29条に規定されている「不在者の財産管理人」と同じ権利や義務を負うことになります。
関連条文
民法第27条 管理人の職務
前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2項
不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3項
前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
民法第28条 管理人の権限
管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
民法第29条 管理人の担保提供及び報酬
家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2項
家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。