民法第945条 不動産についての財産分離の対抗要件
財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
意訳
相続債権者や受遺者は、不動産の財産分離については登記をしなければ、第三者に対して「この物件は財産分離の対象である」ことを主張することができない。
条文解説
相続債権者や受遺者が財産分離の請求を行った場合、相続人は「相続によって取得した財産」と「自分が元々もっていた財産」とを分けて管理し、相続債権者や受遺者に対しては基本的には「相続によって取得した財産」から返済していくことになります。(民法第942条)
本条では「相続によって取得した財産」のなかに不動産が含まれる場合については、単に財産分離請求をしただけでは第三者に対して「この不動産は財産分離の対象となっているので、勝手に売買することはできません」と主張することができず、必ず「処分の制限の登記(処分禁止の仮処分など)」をしなければならないことが定められています。
相続債権者や受遺者を保護することはもちろん、当該不動産について登記簿を見て何の制限も設けられていないと信じて購入した第三者も守ってあげなければならないため、このようなルールが設けられています。
関連条文
民法第942条 財産分離の効力
財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定により配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先立って弁済を受ける。
民法第941条 相続債権者又は受遺者の請求による財産分離
相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
第2項
家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
第3項
前項の規定による公告は、官報に掲載してする。