民法第987条 受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告
遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。
意訳
相続人や遺言執行者など遺贈を実行する義務を負う人やそれ以外の利害関係人は、遺贈を受ける人に対して、相当の期間を定め、その期間内に遺贈を受けるか、または放棄するかの判断を催告することができる。
もし遺贈を受ける人が定められた期間内に遺贈を受けるかまたは放棄するかの意思表示をしない場合は、遺贈を受けると判断したものとみなす。
条文解説
原則として特定遺贈の場合、遺贈を受ける人(受遺者)はいつでも遺贈の放棄をすることができます。(民法第986条)
しかし、受遺者が遺贈を受けるか、あるいは放棄するかの判断をいつまでも待ち続けることは、相続人や利害関係者と受遺者との間の権利関係が不安定なままで、あまり好ましい状態ではありません。
そこで、本条で相続人や利害関係者などの遺贈を実行する側の人に判断を催告する権利を与え、定められた期間内に受遺者に対して遺贈の承諾または放棄の判断を促すことができるようにしました。
催告を受けた受遺者は定められた期間内に遺贈の承諾または放棄の意思表示をすることになりますが、いずれの意思表示もしなかった場合は遺贈を承諾したものとみなされ、遺言書に書かれた遺贈を受けると判断したものとして扱われます。
なお、この条文は「特定遺贈」の場合にのみ適用され、「包括遺贈」には適用されないと考えられています。
関連条文
民法第986条 遺贈の放棄
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。