民法第995条 遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
意訳
遺言書に書かれた遺贈が効力をもたない、もしくは遺贈が放棄された場合、遺贈されるはずだったものは相続人に帰属する。
ただし、遺言書に別の方法が書かれていた場合はその方法に従う。
条文解説
遺贈が効力をもつ前に受遺者が死亡した場合(民法第994条)のように遺贈の効力が生じないケースや遺贈が放棄されたケース(民法第986条)では、遺贈されるはずだったものは宙に浮いた状態となってしまいます。
この条文では、このようなケースにおいては、元々遺贈されるはずだったものは相続人に帰属するということが規定されています。
本条は包括遺贈(取り分の割合を指定した遺贈)を複数の人に行うケースを想定して規定されています。
たとえば遺言書に「AさんとBさんに5分の1ずつの割合で遺贈する」と書かれていた場合に、Aさんが遺贈を放棄したとき、宙に浮いたAさんの5分の1の取り分は、同じく遺贈を受けるBさんにも権利が及ぶのかが問題になります。
この問題を解消するために「宙に浮いた分は亡くなった人の相続人のもの。Bさんに権利は及ばない。」というルールが作られ帰属先が明確にされました。
関連条文
民法第994条 受遺者の死亡による遺贈の失効
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
第2項
停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
民法第986条 遺贈の放棄
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
第2項
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。