民法第1003条 負担付遺贈の受遺者の免責
負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
意訳
相続人による限定承認や遺留分侵害請求によって、負担付遺贈の目的物の価額が当初の予定より減額となった場合、受遺者が負う義務も減額された割合に応じて少なくなる。
ただし遺言書にこれとは異なることが書かれていた場合はそれに従う。
条文解説
限定承認(民法第922条)とは遺産相続の一つの方法で、プラスの遺産を処分することでマイナスの遺産をなくし、残った遺産のみを相続するというものです。
これを行う際には全ての遺産が対象となりますので、おのずと受遺者が元々受け取るはずだった遺贈の目的物の額面も下がってしまいます。
また、相続人の遺留分(法律上保障されている最低限の取り分)が侵害されているケースでは、遺留分を取り戻すために不足分の埋め合わせを請求されることがあり(民法第1046条)、結果として受遺者が受け取れる金額が減ってしまいます。
限定承認や遺留分回復の訴えは遺贈よりも優先して考えられるため、これらのことが行われると元々受遺者が遺贈を受けるはずだったものが減額されてしまう可能性があります。
負担付遺贈の場合、受遺者が受け取れるものが減った一方で負担のみをそのまま残してしまうと「受け取るもの」と「負う負担」のバランスが崩れ、受遺者にとって負担が大きくなってしまいます。
そこでこのような事を避けるために、限定承認や遺留分侵害請求によって遺贈を受ける価額が減少した場合には減った割合だけ負担も軽減するということとされました。
関連条文
民法第922条 限定承認
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
民法第1046条 遺留分侵害額の請求
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。