民法第913条 資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担
担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
意訳
ある相続人が相続分を満額取得できなかった場合にその不足分を補う責任をもつ共同相続人のなかに、自身が負担する分を支払うお金がない人がいる場合、その分については不足分の補填を求める人ならびにお金のある相続人が相続分に応じて分担する。
ただし、不足分の支払いの補填を求める人に過失があった場合には、他の共同相続人に補填を求めることができない。
条文解説
ある特定の相続人が自身の相続分を満額取得できなかった場合、原則として他の相続人が相続分に応じてその不足分を分担して補うことになりますが(民法第911条、第912条)、その中に自分が分担する分を支払えない人がいる場合について書かれたルールです。
たとえば、共同相続人A、B、Cの3人(いずれも被相続人の子)がいて、Aが500万円の債権を相続したとします。
ところが債務者が200万円しか返すことができない場合、Aは300万円を損することになります。
民法第912条の規定によると、この場合は損害額である300万円をA、B、C3人で分担して(1人100万円)補いましょうということになります。
では、本来100万円を補うはずだったBが60万円しか補う能力がなかった場合はどうすればいいのか、これを定めたのが本条です。
条文によると、このような場合はBが補えなかった40万円をAとCの2人で分担することとしています。
但し書きの「求償者の過失」とは、上記の例ではBに100万円を補う能力(お金)があるうちに、Aが請求をしなかった場合が典型的な例です。
条文解説
民法第911条 共同相続人間の担保責任
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
民法第912条 遺産の分割によって受けた債権についての担保責任
各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
第2項
弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。