民法第988条 受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄
受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
意訳
遺言書によって遺贈を受けるよう指定された人が、遺贈の承諾または放棄の意思表示をしないまま亡くなった場合、その相続人は自身の相続権の範囲内で、遺贈の承諾または放棄をすることができる。
ただし、遺言書にこれとは異なる方法で対応するよう書かれていた場合には、その方法に従う。
条文解説
遺贈を行いたい場合は、必ず遺言書にその旨を書かなければなりません。
この条文は遺贈に関する遺言書を書いた人が亡くなり(遺言者の相続開始)、その後に遺贈を受けるよう指定された人(受遺者)がその遺贈について承諾または放棄の意思表示をしないまま亡くなった場合に適用されます。
つまり「遺言者の死亡 → 遺贈の承諾・放棄をしないまま受遺者が死亡」という順番のケースです。
この場合、受遺者は遺贈を受ける権利(または放棄する権利)をもったまま死亡しているため、「受遺者という地位」は受遺者の相続人に継承されることになります。
受遺者の相続人が複数人いる場合は、それぞれが自身の相続分の範囲内において遺贈を承諾するか放棄するかを決めることができます。
遺贈を受けるか放棄するかの判断は、それぞれの相続人が個別に行うことができるため、必ずしも他の相続人と共同で意思決定をする必要はありません。
もし、一部の相続人が遺贈を放棄した場合、その分の権利は遺贈を承諾した他の相続人に対して、それぞれの相続分の割合に応じて帰属すると解されています。
なお、遺言書のなかに「Aさんが遺贈の承諾または放棄をしないまま死亡したときはBさんに遺贈する」のように、最初の受遺者が死亡した後、次の対応が記載されている場合は遺言書に書かれている内容に従うことになります。