民法第1001条 債権の遺贈の物上代位
債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、かつ、その受け取った物がなお相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定する。
2項
金銭を目的とする債権を遺贈の目的とした場合においては、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときであっても、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。
意訳
(金銭以外の)債権が遺贈の目的である場合に、遺言書を書いた人が生前にその債権に基づいた弁済を受け、かつ、その受け取った物が遺産のなかにある場合は、その物を遺贈の目的としたものと推定する。
2項
金銭債権を遺贈の目的とした場合、もし遺産のなかに債権額に相当する金銭が無い場合であっても、その債権額を遺贈の目的としたものと推定する。
条文解説
前提として、遺贈を行う場合は必ず遺言書にその旨を書いておかなければなりません。
『物の引渡しを求める権利』など、金銭以外の債権を遺贈の目的としたような場合にこの条文が適用されます。
たとえば遺言のなかに「自動車メーカーに対して購入した車の引渡しを求める権利をAさんに遺贈する」と書かれていたケースがこれに該当します。
おそらく、契約から納車まで何年も待たなければならず、その間に自分が亡くなってしまった場合のことを考えての遺言作成だったのでしょう・・・
もし、遺言を書いた人が生前にその自動車の引渡しを受け、かつ、その自動車が遺言者が亡くなったときに遺産として残っている場合は、(引渡しを求める債権は消滅しているが)この自動車が受遺者Aさんへの遺贈の目的物であると推定されます。
2項
第1項に対して、こちらは金銭を目的とした債権の遺贈に関するルールです。
もし遺言を書いた人が生前に弁済を受けた場合に、たとえ遺産のなかに債権額に相当する金銭がなかったとしても、その債権額が遺贈されたものと推定するという規定です。
たとえば「Bさんに貸した100万円の債権をCさんに遺贈する」と遺言書に書かれていた場合がこの条文が想定するケースに該当します。
もし遺言を書いた人が生前にBさんから全額弁済を受けていた場合、(金銭債権は消滅しているが)債権額の100万円が金銭として受遺者Cさんへの遺贈の目的物であると推定されます。
この時点で遺贈の目的物が金銭100万円ということが推定されますので、もし相続が発生した時に遺産のなかに金銭が100万円なかったとしても、遺贈義務者(亡くなった方の相続人や遺言執行者など)は受遺者Cさんに対する遺贈を実行する義務(100万円を支払う義務)を負うことになります。