民法第1023条「前の遺言と後の遺言との抵触等」

民法第1023条 前の遺言と後の遺言との抵触等

前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

2項

前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

 

意訳

遺言書が複数見つかった場合において、遺言書に書かれた内容が抵触している部分があった時は、後に書かれた遺言書によって前の遺言書が撤回されたものとみなす。

2項

遺言に書かれていた財産を処分したり贈与したりするなど、遺言を書いた後にその遺言に抵触する行為があった場合は、その遺言は撤回されたものとみなす。

 

条文解説

遺言の撤回について、新しい遺言によってはっきりと『前の遺言を撤回する』と書かれているわけではないが、内容に抵触(矛盾)する部分がある場合には、新しい遺言によって前の遺言が『撤回されたものとみなす』というルールです。

 

たとえば、前の遺言で『自宅を長男に相続させる』と書いていたにもかかわらず、新しい遺言で『自宅を次男に相続させる』と書き直した場合、2つの遺言の内容に抵触する部分があります。

このような場合は、抵触する部分については新しい遺言によって前の遺言が撤回されたとみなされます。(撤回とみなされるのは抵触する部分のみであり、前の遺言全体が撤回されたとみなされるわけではありません)

 

民法第1022条に規定されているように『前の遺言を撤回する』と、新しい遺言にはっきりと書かれていれば分かりやすいですが、そうではなく、前の遺言の内容に抵触する新しい遺言が作成された場合には、前の遺言の内容を維持する考えがなくなったと読み取れるため『前の遺言を撤回したものとみなされる』というわけです。

 

2項

1項は遺言同士の抵触(矛盾)について規定されていましたが、こちらは『遺言と行為』の抵触について規定された条文です。

たとえば、遺言書に『自宅を長男に相続させる』と書いてあったにもかかわらず、事情により第三者に売却をしてしまったようなケースがこれに該当します。

この場合には『自宅を長男に相続させる』という遺言の内容と『自宅を第三者に売却』という行為が抵触することになり、自宅に関する遺言は“売却”という行為によって撤回されたものとみなされます。

 

関連条文

民法第1022条 遺言の撤回

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

 

 

【相続オールサポート大阪】トップページ

 

関連記事

  1. 民法第980条「遺言関係者の署名及び押印」

  2. 民法第934条「不当な弁済をした限定承認者の責任等」

  3. 民法第1036条「使用貸借及び賃貸借の規定の準用」

  4. 民法第964条「包括遺贈及び特定遺贈」

  5. 民法第904条「特別受益者の相続分」

  6. 民法第983条「特別の方式による遺言の効力」

公式LINEアカウントで相談受付中

友だち追加

相続関連記事

PAGE TOP