民法第1027条「負担付遺贈に係る遺言の取消し」

民法第1027条 負担付遺贈に係る遺言の取消し

負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

 

意訳

負担付遺贈を受けた人がその負担(義務)を履行しないとき、相続人は相当の期間を設けたうえで履行するように催告することができる。

それでも期間内に履行されなかった場合は、その負担付遺贈の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

 

条文解説

この条文は、負担付遺贈を受けた人がその負担を履行しない場合に相続人がとるべき対応と、負担付遺贈の取消しを求める方法について規定されています。

 

負担付遺贈とは遺産を受遺者(遺贈を受ける人)に譲り渡す代わりに一定の義務を負わせる遺贈のことをいいます。

たとえば遺言者がAさんに対して『銀行預金を遺贈する代わりに妻の介護をするように』といった内容の遺言が残されたケースです。

この場合、Aさんは遺贈によって銀行預金を受け取ることができますが、同時に遺言者の妻の介護をするという義務も負うことになります。

ところが、このAさんが妻の介護をしない、つまり義務を履行しない場合、遺言者の相続人は相当の期間を設けてAさんに『ちゃんと介護をしなさい』と催促をすることができます。

 

催促をしたにもかかわらず、それでもAさんが介護をしない場合は次の手段として、相続人または遺言執行者は家庭裁判所に対して、この遺贈の取消しを請求することが認められています。

遺贈の取消しは家庭裁判所の総合的な判断に委ねられることになりますが、取消しが決定した場合には遺贈は無効となり、遺贈の目的物は相続人に帰属することになります。

 

負担付遺贈の受遺者は課された義務を履行することを前提に遺贈を受けることができるので、“おいしいところ”だけを受け取ることは許されないということですね。

 

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