民法第８９７条 祭祀に関する権利の承継
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
２項
前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
意訳
系譜（系図）、仏壇、位牌、墓地、墓石の所有権は慣習に従い、中心となって祭祀を行う人が受け継ぐ。
ただし、亡くなった人の指定があった場合には、指定された人が受け継ぐ。
２項
慣習の有無や方法が明らかでない場合は、家庭裁判所がこれらの財産を受け継ぐ人を決める。
条文解説
祖先を祀（まつ）るための財産のことを祭祀財産といい、預貯金や不動産などの財産とは切り離して相続する人を決めること、ならびにその決め方が定められています。
系譜や仏壇、位牌、墓地、墓石などの祭祀財産は、亡くなった人が住んでいた地方の慣習によって受け継ぐ人を決めます。
ただし、亡くなった人が遺言書に書くなどの方法によって、祭祀財産を受け継ぐ人を指定している場合には、指定された人が受け継ぐことになります。
指定された人は原則、その指定を断ることができませんが他の人に権利を譲ることは可能です。
２項
遺言書による指定がない場合や、地方の慣習が明らかでない場合、祭祀財産を受け継ぐ人は家庭裁判所が決めることになります。
手続きは家庭裁判所で「祭祀承継者指定の申立て」を行い、調停を経て、祭祀財産を受け継ぐが決まります。
調停では亡くなった人との関係や祭祀財産を受け継ぐ意欲があるかどうかを基準に承継者が決められる傾向にあります。
