民法第912条 遺産の分割によって受けた債権についての担保責任
各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
第2項
弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
意訳
遺産分割によって債権を相続する場合がいる場合、他の相続人は相続分に応じて、債務者の返済力を補うこととする。
第2項
返済期日になっていない債権および停止条件付きの債権について他の相続人は、返済時における債務者の返済力を補うこととする。
条文解説
遺産分割の話合いの結果、債権を相続する人がいる場合に他の相続人にが負う責任について書かれたルールです。
債権は満額回収できる保証がない遺産ですので、債権を相続した人が額面通りに回収できないとなると損害が発生します。
そこで万が一、全額回収できなかった場合には相続人が相続分に応じて不足分に対して責任を持とうと決めたのが本条の規定です。
たとえば、共同相続人A、B、Cの3人(いずれも被相続人の子)がいて、Aが500万円の債権を相続したとします。(相続分は3人それぞれ3分の1ずつ)
ところが債務者が200万円しか返すことができない場合、Aは300万円を損することになります。
この場合、損害の300万円を3人で分担して補いましょうということになります。
すなわち、債権を相続していないB、CもAの債権に対して相続分である3分の1ずつ(100万円ずつ)の責任を負うことになります。
第2項
まだ返済期日が来ていない債権や停止条件付きの債権についても1項と同じルールです。
停止条件付きの債権とは、ある条件が整った場合にはじめて返済してもらえる債権のことです。
たとえば、「仕事が完了したら代金を支払います」という場合、「仕事の完了」が条件となり、この条件が整ってはじめて代金を支払う義務(債務)と代金を受け取る権利(債権)が発生するといったケースです。