民法第930条 期限前の債務等の弁済
限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。
2項
条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。
意訳
限定承認を選択した場合、限定承認者は弁済の期限が来ていない債権であっても弁済をしなければならない。
2項
停止条件付き、解除条件付きの債権または存続期間の不確定な債権については家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。
条文解説
限定承認を選択した場合において、債権者に対して早期に清算を済ませる目的で設けられたルールです。
通常、弁済期が来ていない債権については債務者は弁済する必要はありませんが、弁済期が到来するのを待っているといつまで経っても他の債権者を含めて清算をすることができません。
そのため、たとえ弁済期に至っていない債務であっても、これについては弁済をしなければならないというルールが設けられました。
2項
1項と同様、条件付きの債権についても条件の成就を待っているといつまで経っても清算をすることができません。
しかし、条件が成就していない以上、債権者・債務者の間で債権の価値を評価することは困難です。
そこで家庭裁判所が選任した鑑定人が債権の価値を評価し、債務者はその評価に従って弁済をしなければならないと定めました。
関連条文
民法第929条 公告期間満了後の弁済
第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
民法第927条 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告
限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。