民法第931条「受遺者に対する弁済」

 

民法第931条 受遺者に対する弁済

限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

 

意訳

相続債権者と受遺者が存在する場合、先に相続債権者に弁済を行い、その後に受遺者に対して弁済を行わなければならない。

 

条文解説

相続債権者と受遺者について、弁済の優先順位を設けたルールです。

限定承認者は、まず相続債権者に対して遺産のなかから弁済を行います。

それでもなお、遺産が残った場合は受遺者に弁済を行うことができます。

 

相続債権者は債権を手に入れるために何らかの対価があったのに対し、受遺者は被相続人の(対価がない)意向によって権利を手に入れることができるため、両者に優先順位をつける必要があります。

また、両者を同順位で扱ってしまうと、被相続人が意図的に遺贈を多くして債権者の権利を容易に侵害することができてしまうため、このようなルールが設けらています。

 

関連条文

民法第929条 公告期間満了後の弁済

第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

 

民法第930条 期限前の債務等の弁済

限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。

第2項

条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

 

民法第927条 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告

限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

 

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