民法第946条 物上代位の規定の準用
第三百四条の規定は、財産分離の場合について準用する。
意訳
民法第304条に規定されている「物上代位」のルールは、財産分離の場合についても適用される。
条文解説
物上代位とは、先取特権をもつ債権者が担保にとっている目的物が勝手に売却されてお金に変えられてしまったり、目的物が無くなったりしたとしても、それにより債務者が受け取るお金や権利を行使して優先的に返済を受けることができる権利です。
物上代位の典型的な例が、建物を担保にお金を貸していたが、その建物が火災によって滅失してしまったケースです。
この場合、担保であった建物は滅失してしまいましたが、お金を貸していた債権者は、債務者が受け取る火災保険金の請求権を行使し、優先的に返済を受けることができるようになります。
財産分離が請求された場合(民法第941条)には、相続債権者や受遺者には先取特権が与えられたとみなし、たとえ返済の元手としてアテにしていた相続財産が形を変えてしまった(売却されてお金に換わったなど)としても、相続人が受け取る金銭や請求権を行使して優先的に返済を受けることができるとしています。(民法第942条)
関連条文
民法第304条 物上代位
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2項
債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
民法第941条 相続債権者又は受遺者の請求による財産分離
相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
第2項
家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
第3項
前項の規定による公告は、官報に掲載してする。
民法第942条 財産分離の効力
財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定により配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先立って弁済を受ける。