民法第955条「相続財産法人の不成立」

 

民法第955条 相続財産法人の不成立

相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の清算人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

 

意訳

相続人が存在することが分かったときは、相続財産は法人化しなかったとみなす。ただし、相続人が存在することが分かるまでの間に相続財産清算人が選任され、精算人が与えられた権限の範囲内で行ったことについては有効とする。

 

条文解説

戸籍上、相続人が存在しない場合や相続放棄などで相続権をもつ人が存在しなくなった場合、相続財産は法人となり(民法第951条)、家庭裁判所によって相続財産精算人が選任され(民法第952条)、必要な手続きが開始されます。

 

しかし、その後に相続権をもつ人がいると分かった場合はどうなるのでしょうか。それについて書かれたのがこの条文です。

条文によると、このような場合は遡って相続財産の法人は成立しなかったとみなすとされています。つまり最初から法人なんて存在しなかったということになります。

 

ただ、そうするとそれまでに相続財産精算人が正当な権限で行った行為(債権者に対する弁済など)が全て無効となってしまいます。

それでは弁済を受けた債権者があまりにも可哀そうですし、この理屈が通ってしまうと取引の安全性が脅かされることになりかねません。

そこで但書きによって、たとえ本条が適用されて相続財産が法人とならなかったとしても、相続財産精算人が行った行為については有効なままとすると規定されています。

 

関連条文

民法第951条 相続財産法人の成立

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

 

民法第952条 相続財産の清算人の選任

前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

第2項

前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

 

【相続オールサポート大阪】トップページ

 

関連記事

  1. 民法第902条「遺言による相続分の指定」

  2. 民法第1028条「配偶者居住権」

  3. 民法第894条「推定相続人の廃除の取消し」

  4. 民法第998条「遺贈義務者の引渡義務」

  5. 民法第1021条「遺言の執行に関する費用の負担」

  6. 民法第946条「物上代位の規定の準用」

公式LINEアカウントで相談受付中

友だち追加

相続関連記事

PAGE TOP