民法第962条「遺言能力」

 

民法第962条「遺言能力」

第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。

 

意訳

遺言書を書くにあたって、民法第5条、9条、13条、17条の規定は適用しない。

 

条文解説

民法第5条は未成年の法律行為について、第9条、13条、17条は法定後見人の行為について規定されています。(下記「関連条文」参照)

これらの条文によると、未成年者や後見を受けている人が法律行為をするには親権者や成年後見人といった法定代理人の同意を得る必要があったり、同意を得ずにおこなった行為を法定代理人が取消しをすることができると規定されています。

遺言書を書く行為は法律行為の一つではありますが、遺言書は書いた人の意思が尊重されるべきものであって、行為の性質上、他人の同意を得たり、他人が遺言書を取り消すことは望ましくありません。

そこでこの条文では15歳に達していれば(第961条)、未成年者でも法定後見を受けている人であっても単独で遺言書を書くことができると定められました。

ただし、書いた遺言書が有効か無効かについては別の問題となります。あくまでも「書くことができる」ということまでです。

 

関連条文

民法第5条 未成年者の法律行為

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2項

前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3項

第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

 

民法第9条 成年被後見人の法律行為

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

 

民法第13条 保佐人の同意を要する行為等

被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

2項

家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

3項

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

4項

保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

 

民法第17条 補助人の同意を要する旨の審判等

家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。

2項

本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3項

補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

4項

補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

 

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