民法第975条「共同遺言の禁止」
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
意訳
2人以上の人が同じ証書に共同で遺言書を書くことはできない。
条文解説
共同遺言の禁止に関するルールです。
この規定が設けられている理由はいくつかあります。
一つ目に、遺言書は遺言者の最終の意思を尊重するものであり、いつでも自由に撤回できなければなりません。
ところが、共同遺言を認めてしまうと、遺言者それぞれが自由に撤回することができなくなってしまいます。
二つ目に、法律関係が複雑になることを防ぐためです。
たとえば、夫婦が共同で遺言書を作成し互いに遺贈し合うような内容を認めてしまうと、どちらが先に亡くなるか分からないため、権利関係が複雑になりかねません。
三つ目に、方式違反があった場合の問題の予防です。
遺言書は法律に定められた方式にしたがって作成しなければなりませんが、もし一方の遺言者に方式違反があって遺言が無効となってしまった場合に、もう一方の遺言の扱いをどうするかという問題が発生してしまいます。
共同遺言は主にこれらの理由で禁止されています。
ただし、切り離せば別々の遺言になるような場合や、別々の遺言が同じ封筒に入っていたという場合は、本条でいう共同遺言にはあたらず、有効となる可能性があります。