民法第1018条 遺言執行者の報酬
家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2項
第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。
意訳
家庭裁判所は、遺産の状況などの事情を考慮したうえで遺言執行者の報酬を決めることができる。
ただし、遺言書のなかに報酬額が記載されている場合はそれに従う。
2項
遺言執行者が報酬を受ける場合は、民法第648条2項および3項(受任者の報酬)、民法第648条の2(成果等に対する報酬)に規定されているルールを準用する。
条文解説
遺言執行者の報酬に関して規定された条文です。
遺言執行者は任務を遂行するにあたって相当の時間と労力を費やすため、任務の成果に応じて報酬を請求することができます。
報酬額は、遺言書に記載がある場合にはそれに従うことになりますが、記載がない場合は遺言執行者が家庭裁判所に申し立てて決めてもらうことができます。
また、遺言執行者と相続人の当事者間での話合いによって報酬額を決めるケースもあります。
なお、相続人が遺言執行者に就く場合など、“身内”が遺言執行者になる場合には「無報酬」とすることも可能です。
2項
遺言執行者への報酬の支払い方に関する規定です。
これについては、民法第648条「受任者の報酬」と民法第648条の2「成果等に対する報酬」に規定されているルールに準(なぞら)えて、適用されることになります。(下記条文参照)
一つ目に、遺言執行者は任務を完了した後でなければ報酬を受け取ることはできません。つまり“後払い”ということになります。
二つ目に、相続放棄で相続人がいなくなった場合や相続人の都合で遺言執行者を解任された場合など、遺言執行者に責任がない理由で任務を継続することができなくなった場合は、遺言執行者は完了した部分までの報酬を請求することが可能です。
三つ目に、ものやお金の引渡しをもって任務完了となる場合には、その引渡しと同時に報酬が支払われなければなりません。
関連条文
民法第648条 受任者の報酬
2項
受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3項
受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。
民法第648条の2 成果等に対する報酬
委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2項
第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
民法第634条 注文者が受ける利益の割合に応じた報酬
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。