民法第1038条 配偶者による使用
配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2項
配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3項
配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
意訳
配偶者短期居住権を取得した配偶者は相続が発生する前と同じように、通常払わなければならない注意をしながら、居住建物の使用及び収益をしなければならない。
2項
配偶者は、建物取得者の承諾を得なければ建物を第三者に使用させることはできない。
3項
配偶者が注意義務を怠ったり、建物取得者の承諾なしに第三者に建物を使用させた場合には、建物取得者は配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
条文解説
この条文では配偶者短期居住権を取得した配偶者に対して、その建物に住み続けるうえで『相続開始前と同じように住みなさい』ということを求めています。
居住権はあるけど、名義(所有権)は自分ではないからという理由でいい加減な管理をしないように釘をさしています。
2項
配偶者短期居住権を取得した配偶者は、建物取得者の承諾がなければ第三者に建物の使用をさせることはできません。
裏を返せば、建物取得者の承諾を得ておけば第三者に建物の使用をさせることはできますが、配偶者短期居住権では配偶者による「収益」は認められていませんので、建物を賃貸に出すことはできません。
3項
配偶者が、上記2項に定められている規定に違反した場合にとることができる建物取得者の対応に関するルールです。
配偶者による規定違反が認められた場合、建物取得者は配偶者に対して意思表示をすることによって配偶者短期居住権を消滅させることができます。
「配偶者居住権」のときとは異なり、“是正の勧告”は必要ありません。(下記「関連条文」参照)
関連条文
民法第1032条 配偶者による使用及び収益
第4項
配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。