民法第895条「推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理」

 

民法第895条 推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理

推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。

推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。

2項

第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。

 

意訳

相続廃除の請求や廃除取消しの請求をした後、裁判所の決定が出るまでの間に被相続人が死亡し、相続が開始されたときは、家庭裁判所は親族、利害関係人、検察官の請求によって遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。

遺言書によって意思表示された場合も同じルールとする。

2項

家庭裁判所が「遺産の管理について必な処分を命ずること」として遺産の人を選任した場合には、管理人は民法第27条~第29条に定められているのと同じ権限や義務を負う。

 

条文解説

推定相続人が被相続人に対して虐待をしたり重大な侮辱を加えたとき、または著しい非行があったとき場合、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求し相続人の地位を剥奪することができます。(民法第892条

本条は被相続人が家庭裁判所に推定相続人の廃除(または廃除の取消し)を請求した場合に、それが認められるかどうかが分からないタイミングで被相続人が亡くなり相続が発生した場合に適用されるルールです。

廃除の決定あるいはその取消しは、相続権をもつ人を確定させる重要な事項です。

当然、遺産分割にも影響を及ぼしますので大きな混乱を招きかねない状況です。

 

このような場合には、親族や利害関係人、検察官の請求があれば家庭裁判所は遺産の持ち出しを禁止するような処分を下したり、遺産の管理人を選任したりして、混乱を避けるために必要な処分を命ずることができます。

遺産を管理する管理人が選任された場には、その管理人は民法第27条~第29条に定められている「不在者の財産の管理人」と同じ権限や義務を負うこととなります。

 

関連条文

民法第27条 管理人の職務

前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

2項

不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

3項

前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

 

民法第28条 管理人の権限

管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

 

民法第29条 管理人の担保提供及び報酬

家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

2項

家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

 

民法第103条 権限の定めのない代理人の権限

1号

保存行為

2号

代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 

民法第892条 推定相続人の廃除

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

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