民法第922条 限定承認
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
意訳
相続人はプラスの財産(現預金や不動産など)の範囲内において、マイナスの財産(借金や未払い金など)を相続することができる。
条文解説
相続の限定承認について書かれたルールです。
限定承認とはプラスの財産の範囲内において、マイナスの財産を相続することを言います。
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からないケースや、マイナスの財産があるのは分かっているが、自宅など大切なプラスの財産を相続したいため相続放棄はしたくないケースで有効な方法です。
少しわかりにくいので、具体例を2つ挙げて解説します。
ケース1 プラスの財産:1,000万円、マイナスの財産:800万円
プラスの財産がマイナスの財産よりも多いケースです。
このケースで限定承認をした場合、プラスの財産の範囲(1,000万円)でマイナスの財産も相続することになりますので、マイナスの財産を800万円相続しなければなりません。
ケース2 プラスの財産:800万円、マイナスの財産:1,000万円
マイナスの財産がプラスの財産よりも多いケースです。
この場合、限定承認をするとプラスの財産の範囲(800万円)でマイナスの財産の財産を相続することになりますので、マイナスの財産は1,000万円のうち800万円を相続することになります。
限定承認を選択する場合は相続人全員で、原則として相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出なければなりません。
単純承認や相続放棄とは異なり、相続人が複数人いる場合には各相続人の個別の判断で限定承認を選択することはできません。(民法第923条)
したがって、相続人のなかの一人でも限定承認に反対する人がいる場合はこの方法は使えませんので注意が必要です。
関連条文
民法第923条 共同相続人の限定承認
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。