民法第956条 相続財産の清算人の代理権の消滅
相続財産の清算人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2項
前項の場合には、相続財産の清算人は、遅滞なく相続人に対して清算に係る計算をしなければならない。
意訳
家庭裁判所によって選任された相続財産精算人は、相続人が相続を承認した時にその権限を失う
2項
相続人が相続を承認したことによって権限を失った相続財産精算人は、遅れることなく相続人に対して、これまでの精算に関して計算を行わなければならない
条文解説
戸籍上、相続人が存在しない場合や相続放棄などで相続権をもつ人が存在しなくなった場合、相続財産は法人となり(民法第951条)、利害関係人や検察官からの請求があった場合には家庭裁判所が相続財産清算人を選任することになります。(民法第952条)
ところが、いったん家庭裁判所によって相続財産清算人が選任されたものの、その後に相続人が存在することが分かった場合は、相続財産の管理・精算は相続人が行うことになりますので相続財産清算人の業務は終了しますが、本条では『相続財産清算人がその権限を失うタイミング』について規定されています。
条文によると相続財産清算人の権限が消滅するのは「相続人が相続を承認した時」と書かれています。
つまり、単に相続人が見つかっただけではその相続人が相続を承認するのか放棄するのかは分かりませんので、この時点で清算人の権限を消滅させるのは早いということです。
もし相続放棄を選択すれば相続人が存在しない状況が継続する可能性が残ります。
そこで相続財産清算人が権限を失うタイミングは「相続人が相続を承認した時」と定められました。
2項
この条文では、相続人が相続を承認したことによって権限を失った相続財産清算人に対して、相続承認後すぐに管理中の収支などを計算して相続人に報告をしなければならない義務を課しています。
相続財産清算人の業務は、この清算結果を相続人に引き継いで終了となります。
関連条文
民法第951条 相続財産法人の成立
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
民法第952条 相続財産の清算人の選任
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
第2項
前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。