民法第992条「受遺者による果実の取得」

民法第992条「受遺者による果実の取得」

受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

意訳

遺贈の履行を請求できるようになったタイミング以降、その遺贈物から生まれる果実については受遺者が取得する。ただし、遺言書のなかでこれとは異なる内容が記載されていた場合は、その内容に従う。

 

条文解説

「果実」とは物から生まれる利益のことを指します。

この条文では、遺贈されるものが指定されている「特定遺贈」が行われる際に、その遺贈物から生まれる利益を受遺者(遺贈を受ける人)がどのタイミングで取得するのかについて規定されています。

 

果実には『天然果実』と『法定果実』の2種類があります。(民法第88条)

『天然果実』とは“物の用法に従い収取する産出物”のことで、たとえば木から取れる果物や牛から取れる牛乳、ニワトリから取れる卵などがこれにあたります。

一方、『法定果実』とは“物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物”のことで、たとえば不動産の借主から受け取る地代や家賃、貸したお金から生まれる利息などがこれに相当します。

 

遺贈を行う場合は、必ずその旨を遺言書に書いておかなければなりません。

遺言書のなかで遺贈を行うタイミングについて特に指定をしていない場合は、相続が発生したタイミングで遺贈の効力も発生しますので、この時点を「遺贈の履行を請求することができる時」とし、遺贈物から生まれる果実を受け取る権利についてもここで発生します。

一方で「○○(遺贈を受ける人)が20歳になった時」のように遺贈を行うタイミングが指定されている場合は、その条件が満たされた時点が受遺者が「遺贈の履行を請求することができる時」となり、このタイミングで果実を受け取る権利が発生します。

したがって、受遺者が果実を取得する権利が発生するタイミングは違えど、遺贈の効力発生から実際に遺贈が行われるまでの間に生まれた果実については受遺者が受け取る権利をもちますので、いずれのケースでも遺贈を実行する義務をもつ人(遺贈義務者)は遺贈物とともにそれまでに生まれた果実についても受遺者に引き渡さなければなりません。

 

なお、遺言書のなかで「遺贈物の引渡しより前に発生した果実については△△(受遺者以外の人)が取得する」というように、上記原則以外のことが記載されていた場合は、その遺言書の内容に従うことになります。

 

関連条文

民法第88条 天然果実及び法定果実

物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。

2項

物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

 

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