民法第925条「限定承認をしたときの権利義務」

 

民法第925条 限定承認をしたときの権利義務

相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。

 

意訳

限定承認を選択したときは、相続人と被相続人(亡くなった方)の間にあった権利義務は消滅しなかったとみなす。

 

条文解説

この条文を解説するうえで最も典型的な例は、相続人の1人が被相続人にお金を貸していたケースです。

この場合「被相続人が(お金を借りた)相続人に借金を返済する義務」(債務)が遺産に含まれることになります。

この返済義務をお金を貸していた本人が相続すると、同一人物が相反する権利義務をもつことになり、通常は「混同」と言って、もっていても意味のない相反する権利義務は消滅することになります。(民法第179条、下記関連条文参照)

つまり「借金を返済する義務」を負ったことにより「借金を返済してもらう権利」は混同で消滅することになり、借金の返済を受けたと解釈することができます。

そうなると、他にも債権者(被相続人にお金を貸していた人など)がいた場合「この相続人だけ優先的に返済を受けたのは不公平だ!」と言って利害関係に大きな影響を及ぼすことになってしまいます。

そこで、このようなケースを避けるために相続人と被相続人との間の権利義務、すなわち「お金を返してもらう権利」や「お金を返済しなければならない義務」は消滅しなかったとみなすというルールが定められました。

 

関連条文

民法第179条 混同

同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

第2項

所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

第3項

前二項の規定は、占有権については、適用しない。

 

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