民法第957条「相続債権者及び受遺者に対する弁済」

 

民法第957条 相続債権者及び受遺者に対する弁済

第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。

2項

第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

 

意訳

相続財産清算人が選任された旨の公告があっときは、相続財産清算人は被相続人(亡くなった方)の債権者および受遺者全員に対して、一定期間内(2ヶ月以上に設定)に弁済の請求を申し出てくる旨の公告をしなければならない。

この場合の“一定期間”とは、相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内(民法第952条第2項)に満了するものでなければならない。

 

2項

相続財産清算人が第1項の公告をおこなったときは、民法第927条2項~4項、第928条~935条の規定(限定承認者に関する規定)を準用し、相続財産清算人はこれらの規定に従って手続きを進めなければならない。

 

条文解説

相続人がいない場合の手続きの流れは以下のようになります。

1.相続財産の法人化(第951条

2.相続財産清算人の選任および相続人申出の公告(第952条
↓ 
3.相続債権者や受遺者に対する請求申出の公告(第957条)
↓ 
4.相続債権者や受遺者に対する弁済
↓ 
5.特別縁故者の財産分与(第958条の2
↓ 
6.国庫への帰属(第959条

 

相続財産清算人が選任された旨および相続人捜索の公告があった場合、清算人の次の仕事は被相続人の債権者や受遺者を探し出し、彼らに対して弁済や相続財産の引渡しを行うことになります。

相続債権者や受遺者に対して平等に弁済の機会を提供するために公告という方法を用い、心当たりのある人は一定期間内(2ヶ月以上に設定)に名乗り出てくるよう求めることを必要としています。

ただし、この“一定期間”は、相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内(民法第952条第2項)に満了するように設定しなければなりません。

 

2項

民法第927条2項~4項、第928条~935条(第932条但書は除く)には被相続人の債権者や受遺者が相続の限定承認者に対して弁済の請求をする場合の手続きについて書かれています。

これらの条文の「限定承認者」の部分を「相続財産清算人」と読み替えると理解しやすくなると思います。

 

関連条文

民法第952条 相続財産の精算人の選任

前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

第2項

前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

 

民法第927条 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告

限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

第2項

前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。

第3項

限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

第4項

第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

 

民法第928条 公告期間満了前の弁済の拒絶

限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

 

民法第929条 公告期間満了後の弁済

第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

 

民法第930条 期限前の債務等の弁済

限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。

第2項

条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

 

民法第931条 受遺者に対する弁済

限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

 

民法第932条 弁済のための相続財産の換価

前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。(後略)

 

民法第933条 相続債権者及び受遺者の換価手続への参加

相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。

 

民法第934条 不当な弁済をした限定承認者の責任等

限定承認者は、第九百二十七条の公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第九百二十九条から第九百三十一条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。

第2項

前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対する他の相続債権者又は受遺者の求償を妨げない。

第3項

第七百二十四条の規定は、前二項の場合について準用する。

 

民法第935条 公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者

第九百二十七条第一項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産についてのみその権利を行使することができる。ただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

 

【相続オールサポート大阪】トップページ

 

関連記事

  1. 民法第1012条「遺言執行者の権利義務」

  2. 民法第956条「相続財産の清算人の代理権の消滅」

  3. 民法第914条「遺言による担保責任の定め」

  4. 民法第1011条「相続財産の目録の作成」

  5. 民法第971条「方式に欠ける秘密証書遺言の効力」

  6. 民法第904条「特別受益者の相続分」

公式LINEアカウントで相談受付中

友だち追加

相続関連記事

PAGE TOP