民法第958条 権利を主張する者がない場合
第九百五十二条第二項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。
意訳
相続人捜索の公告(第952条)の期間内に相続人が現れなかったときは、相続人ならびに相続財産清算人に知られなかった相続債権者と受遺者はその権利を失う。
条文解説
相続人がいない場合の手続きの流れは以下のようになります。
1.相続財産の法人化(第951条)
↓
2.相続財産清算人の選任および相続人申出の公告(第952条)
↓
3.相続債権者や受遺者に対する請求申出の公告(第957条)
↓
4.相続債権者や受遺者に対する弁済
↓
5.特別縁故者の財産分与(第958条の2)
↓
6.国庫への帰属(第959条)
本条は相続人の捜索期間が満了する間に相続人や相続債権者、受遺者が現れなかった場合の権利の消滅について規定されています。
「家庭裁判所も相続財産清算人も必要な公告をし、相続人の登場や相続債権者、受遺者の請求の申出を一定期間待った。だけど現れなかった・・・」
このような時は、もういつまでも待つことはできませんので手続きは次のステップに進んでいきます。
この条文では、たとえ相続人や相続債権者として正当な権利をもっている人であっても期間内に名乗り出てこなかった場合はその権利を失うとされています。
つまり「相続財産清算人選任、相続人捜索の公告」(民法第952条)、「相続債権者、受遺者への請求申出の公告」(民法第957条)を経ても、自己の権利を主張し登場しなかった場合は、たとえ正当な権利をもっていたとしても、公告期間が満了した時点でその権利は失うことになります。
関連条文
民法第957条 相続債権者及び受遺者に対する弁済
第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
民法第952条 相続財産の清算人の選任
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
第2項
前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
民法第951条 相続財産法人の成立
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。