民法第958条の2 特別縁故者に対する相続財産の分与
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2項
前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
意訳
相続人の捜索ならびに相続債権者・受遺者の請求申出の公告期間が満了した場合、家庭裁判所は相当と認める場合は「亡くなった人と生計を共にしていた人」「亡くなった人の療養看護に努めた人」「亡くなった人と特別の縁故があった人」などの請求によって、債権者への弁済した後に残った遺産の全部または一部をこれらの人に与えることができる。
2項
特別縁故者が相続財産の分与を求める場合は、民法第952条第2項の「相続財産清算人が選任された旨および相続人がいる場合は一定期間内に申し出てくる旨」の公告期間が満了した後、3ヶ月以内に請求をしなければならない。
条文解説
相続人がいない場合の手続きの流れは以下のようになります。
1.相続財産の法人化(第951条)
↓
2.相続財産清算人の選任および相続人申出の公告(第952条)
↓
3.相続債権者や受遺者に対する請求申出の公告(第957条)
↓
4.相続債権者や受遺者に対する弁済
↓
5.特別縁故者の財産分与(第958条の2)
↓
6.国庫への帰属(第959条)
相続人が登場せず、相続債権者や受遺者に対する弁済を終えてもなお相続財産が残っている場合は、次に特別縁故者からの請求を待つことになります。
特別縁故者とは過去の裁判例によると、条文中の「亡くなった人と生計を共にしていた人」には内縁関係の夫婦や亡くなった子の配偶者が認められたケースがあります。
「亡くなった人の療養看護に努めた人」には献身的に身の回りの世話をされたり、介護士であっても報酬以上に療養看護に努めた場合には特別縁故者として認定される可能性があります。
また、最近では亡くなった方が生前に入所していた介護施設が、通常期待される以上のサービスを行ったケースで特別縁故者として認められた裁判例も出てきています。
特別縁故者が遺産の取得を希望する場合は、家庭裁判所に対して財産分与の請求をしなければなりません。
家庭裁判所は相続債権者(亡くなった人の債権者)への弁済や受贈者への遺贈を終えて残った遺産のなかから、相当と認められた場合にのみ、特別縁故者への遺産の取得を認めることになります。
2項
特別縁故者が遺産の取得を希望する場合は、家庭裁判所に対して財産分与の請求をしなければなりませんが、この請求は「相続財産清算人が選任された旨および相続人がいる場合は一定期間内に申し出てくる旨」の公告期間(民法第952条2項)が満了した後、3ヶ月以内におこなわなければなりません。
3ヶ月を過ぎてしまうと請求する権利を失ってしまいますので、上記公告期間が満了するタイミングをしっかりと確認しておきましょう。
関連条文
民法第957条 相続債権者及び受遺者に対する弁済
第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
民法第952条 相続財産の清算人の選任
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
第2項
前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
民法第951条 相続財産法人の成立
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
民法第959条 残余財産の国庫への帰属
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。