民法第1033条 居住建物の修繕等
配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2項
居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3項
居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
意訳
配偶者は建物の使用、収益に必要な修繕をすることができる。
2項
建物の修繕が必要である場合に配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、所有者がその修繕をすることができる。
3項
居住建物が修繕が必要なとき、または建物の権利を主張する者がいるときは、配偶者は所有者に対して遅滞なくその旨を通知しなければならない。
ただし、建物の所有者が既に知っているときは、通知しなくてもよい。
条文解説
配偶者居住権を取得した配偶者はその家に住み続けるため、あるいは賃貸に出して収益を得るために必要な修繕を行うことができます。
修繕にかかった費用については、民法第1034条1項に規定されている『通常の必要費』に該当するため、原則として配偶者が負担することになります。
2項
建物の修繕が必要であるにもかかわらず、配偶者が修繕を行わない場合や何らかの理由で修繕できない場合は、建物の所有者がその修繕を行うことができるようになります。
この場合も原則として修繕費は配偶者の負担となるため、所有者が修繕費を立て替えて支払った場合、所有者は配偶者に対して1年以内に立替金の返還を請求しなければなりません。(1年で時効が成立するため。民法第600条2項 下記関連条文参照)
3項
建物の修繕が必要であるにもかかわらず配偶者が修繕をできない場合や、所有者以外の人が『この建物の所有者は私です!』と言ってきた場合は、配偶者は所有者に対して遅滞なくその旨を通知しなければなりません。
所有者にとっては、修繕が必要な箇所があったとしても配偶者からの申告がなければ気が付かないことも多くありますので、『配偶者が修繕できないのであれば所有者が代わりにするのでできるだけ早く教えてください』という感じですね。
他人名義の建物に住むという状況は『賃貸借』に似ていますので、そこで定められているルールがこの条文でも使われています。(民法第615条「賃借人の通知義務」 下記関連条文参照)
関連条文
民法第600条 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2項
前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
民法第615条 賃借人の通知義務
賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
民法第1034条 居住建物の費用の負担
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。