民法第947条「相続債権者及び受遺者に対する弁済」

 

民法第947条 相続債権者及び受遺者に対する弁済

相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

2項

財産分離の請求があったときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産をもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした相続債権者及び受遺者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

3項

第九百三十条から第九百三十四条までの規定は、前項の場合について準用する。

 

意訳

相続人は、相続債権者または受遺者の請求による財産分離の請求期間、配当加入の申出期間が満了していない間は、相続債権者及び受遺者に対する弁済を拒むことができる。

2項

財産分離の請求があった場合には、財産分離の請求期間、配当加入の申出期間が満了した後、相続財産(遺産)のなかから相続債権者及び受遺者に対して、債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先的に弁済を受ける権利をもっている人がいる場合は、その人から先に弁済をしなければならない。

3項

930条から934条に書かれている規定は、2項でいう相続人から相続債権者などへの弁済についても準用する。

 

条文解説

相続債権者や受遺者が財産分離の請求期間や配当加入の申出期間が満了していない間(民法第941条第1項、第2項)は、相続人は「誰に対していくら弁済しなければいけないのか」が確定しません。

そのような状況のなかで個別に弁済を開始してしまうと、他の債権者に不利益が生じてしまい公平な弁済を実現できない可能性があります。

そのため不公平な弁済を避けるために、債権者からの個別の「弁済してください」という申出に対して「申出期間が満了し全ての弁済相手と弁済額が確定するまで弁済しません」という弁済の拒否をすることができます。

 

2項

財産分離の請求があった場合、相続人は財産分離の請求期間や配当加入の申出期間が満了した後に相続財産(遺産)のなかから相続債権者及び受遺者に対して、全債権額に対するそれぞれの債権額の割合に応じて弁済を行うことになります。

ただし、抵当権や質権など、優先的に弁済を受ける権利をもっている債権者がいる場合には、その人から全額を優先的に弁済しなければなりません。

 

3項

第930条から第934条までの規定は「限定承認者」が主語になっていますが、これを「財産分離の請求を受けた相続人」を主語として読み替え、相続人はこれらの規定に従って2項に書かれている弁済をしなければなりません。

 

関連条文

民法第941条 相続債権者又は受遺者の請求による財産分離

相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。

2項

家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

 

民法第927条 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告

限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

 

民法第929条 公告期間満了後の弁済

第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

 

民法第930条 期限前の債務等の弁済

限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に従って弁済をしなければならない。

2項

条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って弁済をしなければならない。

 

民法第931条 受遺者に対する弁済

限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

 

民法第932条 弁済のための相続財産の換価

前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

 

民法第933条 相続債権者及び受遺者の換価手続への参加

相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。

 

民法第934条 不当な弁済をした限定承認者の責任等

限定承認者は、第九百二十七条の公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内に相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第九百二十九条から第九百三十一条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様とする。

2項

前項の規定は、情を知って不当に弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対する他の相続債権者又は受遺者の求償を妨げない。

3項

第七百二十四条の規定は、前二項の場合について準用する。

 

民法第724条 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限

不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

 

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