民法第1025条 撤回された遺言の効力
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
意訳
第1022条「遺言の撤回」、第1023条「前の遺言と後の遺言との抵触等」、第1024条「遺言書又は遺贈の目的物の破棄」に規定されている方法によって撤回された遺言は、その撤回の行為自体が撤回されたり、取消しされたりするなどによって撤回の効力が生じなくなった場合であっても、前の遺言の効力は回復しない。
ただし、撤回が遺言者の意思とは異なるものであったり、詐欺または強迫によって行われたものであるときは前の遺言の効力が回復する場合がある。
条文解説
一度書いた遺言書を撤回した後に、撤回したことを撤回する(=やっぱり撤回しない)ときや撤回を取消しするなどされた場合に元の遺言書の効力がどうなるのかについて規定されています。
条文によると、原則として一度撤回された元の遺言書の効力は回復しないと規定されています。
理由としては、遺言書を書いた人が元の遺言書の効力を回復させることを希望するとは限らないこと、また元の遺言書の効力を回復させることによって「亡くなる直前に言っていたことと遺言に書かれていることが違うやん!」といった争いが生じるおそれがあることが挙げられます。
遺言書は書いた人が亡くなってはじめて効力をもつため、存命中はいつでも何度でも書き換えることができますので、一度撤回した遺言の効力を再度回復させたい場合には、新たに遺言書を作成するのがよいでしょう。
なお、この条文の例外規定として、錯誤(頭の中の考えと行為が一致していないこと)によって撤回した場合や騙されたり脅されたりして撤回させられた場合、すなわち遺言者の意思によって撤回したと認められない場合には元の遺言の効力が回復する場合があります。
関連条文
民法第1022条 遺言の撤回
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
民法第1023条 前の遺言と後の遺言との抵触等
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
第2項
前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
民法第1024条 遺言書又は遺贈の目的物の破棄
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。