民法第951条 相続財産法人の成立
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
意訳
戸籍上、相続権をもつ人が存在しない場合や相続人が全員相続放棄をした場合など、相続権をもつ人が存在しない場合、相続財産(遺産)は法人とする。
条文解説
民法第951条~第959条までは亡くなった方の相続権をもつ人が存在しない場合の手続きの方法について規定されています。
相続人がいない場合の手続きの流れは以下のようになります。
1.相続財産の法人化(第951条)
↓
2.相続財産清算人の選任および相続人申出の公告(第952条)
↓
3.相続債権者や受遺者に対する請求申出の公告(第957条)
↓
4.相続債権者や受遺者に対する弁済
↓
5.特別縁故者の財産分与(第958条の2)
↓
6.国庫への帰属(第959条)
本条では相続権を持つ人がいない場合の手続きの一歩目、相続財産を法人とすることが書かれています。
遺産を相続する人がいない場合、その遺産は宙に浮いている状態となってしまい、次の所有者(取得者)を探したり、借金の返済に充てたりすることができなくなってしまいます。
そこで宙に浮いている状態を解消する目的で行われるのが相続財産(遺産)の法人化です。
法人とすることで遺産を“地に足をつけた状態”にしてあげることができ、以後、正当な権限をもった人(相続財産清算人、第952条)によって必要な手続きを進められるようになります。
必要な手続きとは、たとえば相続人を探すことや、遺産を売却して借金の返済をすることを指します。
なお条文中の「相続人のあることが明らかでない」とは、戸籍上、相続権を持つ人が存在しない場合はもちろん、相続放棄(第938条)や相続欠格(第891条)、相続廃除(第892条)によって相続権をもつ人が存在しなくなった場合も含まれます。
関連条文
民法第952条 相続財産の清算人の選任
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
第2項
前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。