民法第990条 包括受遺者の権利義務
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
意訳
包括遺贈を受ける人は、相続人と同じ権利義務を負う
条文解説
包括遺贈を受ける人(包括受遺者)の地位について定められた条文です。
包括遺贈とは「遺産の○割を△△に遺贈する」というように、取り分の割合を指定した遺贈の方法です。
包括受遺者はプラスの遺産もマイナスの遺産も指定された割合で引き継ぐことになるため、亡くなった人の相続人と同様の地位であると考えられることから、このようなルールとなっています。
たとえば、借金などのマイナスの遺産が多いために包括遺贈を放棄したい場合は、相続人が行う「相続放棄」と同じ手続きを踏まなければなりません。(民法第915条)
また、税務面でも包括遺贈の場合は贈与税ではなく、相続税のルールに従って申告・納付を行う必要があります。
一方で、相続人とは異なる点もいくつかあります。
たとえば、相続開始時に遺言書で指定されていた包括受遺者が亡くなっていた場合、代襲相続のように次の順位の人が元の包括受遺者の地位に立って遺贈の権利を引き継ぐことはできません。
また、相続人が相続放棄を行った場合、放棄された分は相続を承諾した他の相続人が引き継ぐことになり、包括受遺者の取り分はあくまでも指定された割合にとどまります。
関連条文
民法第915条 相続の承認又は放棄をすべき期間
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。